2024年10月4日金曜日

ソウルでの問いと答え その1

 ソウルインディアニメーション映画祭に参加するため、 9月27日から10月1日まで音楽家の上の助空五郎さんとソウルを訪れた。初韓国である。フェスティバルディレクターであるチェ・ユジンさんによればこの映画祭は、立ち上げ当初は韓国アニメーションのための映画祭だったが、回数を重ねる事にアジア全域へと広がり、今年は20回目を迎える節目の年になったという。私たちは27日に行われた20th anniversaryに参加し、そこで空五郎さんが「カワウソ」と飛騨民謡「ぜんぜのこ」を歌い、会場を盛り上げたのだった。

私たちの「カワウソ」は28日に1回目の上映が行われた。観客はほぼ若者で埋まっていたが上映後のQ&Aでは多くの質問が集中し、彼らの学ぼうとする姿勢には感心するものがあった。「ハンバーガーが落ちてくるのは資本主義への批判ですか?」と半分冗談の様なこの質問を受けたのは初めてだったが、韓国の若い世代にもそんな視点を持つ人がおり、それは現在の韓国の"豊かさ”への”問い"に繋がるものなのだろうと感じた。日本の若者同様に自由と豊さを享受している様に見えてもその奥には不安と疑念が横たわっている。「カワウソ」で描きたかった事の一つにそんな”問い”があったのは確かであるが、落下するハンバーガーやコカ・コーラを見て”資本主義批判”を連想する人がどれほどいるだろうか。私はこの質問を受け、かつてメキシコのルベン・ガメス監督が「血のコカ・コーラ」でコカ・コーラをその象徴として描いていたのを思い出していた。

2016年に釜山国際映画祭が国からの圧力により「上映の自由」が危ぶまれた事実は世界中が記憶していることであるが、その後も政府に批判的な監督や製作会社のリストを提出せよと韓国政府が映画祭に圧力をかけたというニュースも耳に入ってきていた。それは一見自由で活気に溢れる華やかなソウルの風景からは少し想像し難い事ではあるが、常に国からの圧力に抗いながら表現を続けている人々が韓国にはいることを物語っている。そしてそれは落下するハンバーガーに”問い”を持つことと少し重なる様に私には思えた。
疑問”がなければ”問い”は生まれず、そして”答え”にたどり着くこともない。今回のソウルインディアニメーション映画祭では多くの作品が様々な”問い”を投げかけており、それは今後のアジア文化の発展を大いに予感させてくれるものだった。これからのアジアに期待して良いだろう。

감사합니다 Seoul Indie-AniFest2024.


Photo by kasumi ozeki


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